a-ha「テイク・オン・ミー」

1980年代の音楽シーンをふり返るとき、
MTVを抜きには語れない。
事実、ビデオクリップが話題を呼んで大ヒットした曲も少なくない。

その筆頭を挙げるとすれば、
やはり
a-haの『テイク・オン・ミー』であろう。

a-ha1982年にノルウェーで結成され、
84年に『テイク・オン・ミー』でデビューした。
この曲、母国ではヒットしたものの、
ワールドワイドなヒットにはつながらなかった。
しかし、翌
85年にアレンジをし直し再リリースしたところ、
世界的に大ヒット。
見事、全米
1位、全英でも2位を獲得している。

スケッチ描き風のアニメと実写を融合させた
『テイク・オン・ミー』のビデオクリップは、
いま観てもなかなか斬新である。

実をいうと、僕はこの曲が日本でも大ヒットしていた85年当時、
あまりこの曲には興味がなかった。
というより、なんとなくアイドルバンドが
甘ったるい曲をやっているという先入観があり、
意図的に遠ざけていたのだ。

86年のグラミー賞授賞式で
a-haはオープニングアクトを務めた。
彼らの生演奏の映像が世界中に流れたのは、
このときがはじめてだった。
僕はブラウン管に映る彼らを観ながら、
あらためて『テイク・オン・ミー』を聴いてみた。
いい曲だった。
こんなことなら、ヘンに意地を張らずにもっと早くから、
ちゃんと聴いておけばよかったと思った。

先入観というのは、恐ろしいものである。
それで大事なものや素晴らしいものを見失う危険性は高い。
僕は
a-haからそれを学んだ。

a-haは『テイク・オン・ミー』の一発屋的なイメージがあるが、
そうではない。
アメリカでこそその後大ヒットはなかったものの、
イギリスではセカンドシングルがナンバーワン
になったのをはじめ、
80年代にトップテンヒットを8曲も生み出しているという。

1994年、リレハンメル・パラリンピックのテーマ曲を手がけた後、
a-haは一時解散するが98年に再結成。
2000年に発売されたアルバムがヨーロッパ各国でプラチナ・ディスクになり、
昨年
1月に発売された“アナログ”は
実に
18年ぶりとなる全英トップテン入りを果たしたそうだ。

リック・アストリーにしろ、a-haにしろ、
80年代に若くして大成功を収めたミュージシャンが見事復活を遂げ、
いまなお活躍しているというのは実にうれしいし、励まされる。


80
年代、エンターテインメントとしてのみならず
重要なプロモーションチャネルとしてあれほど隆盛を極めていた
MTVは、
1996年にMTVMTV2に分割されてから、
その人気は急激に下降線を描いたという。
その背景には、インターネットの影響もあるのだろうか?

80年代はインターネットなんてなかったけれど、MTVがあった。
MTVを通じて、たくさんの素敵な曲に出会うことができた。
それはすごく幸せな経験だったといまも思う。


2007.03