あがた森魚「僕は天使ぢゃないよ」

エンケンこと遠藤賢司の奥さんは、
元ヴァージン
VSのメンバーであったと今さらながら最近知った。

ヴァージン
VSは加山雄三や樹木希林さん、
さらには松田優作の“探偵物語”にも出ていた
成田三樹夫さんや山西道広、竹田かほりなどが出演していた
“探偵同盟”主題歌『ロンリー・ローラー』や、
アニメ“うる星やつら”のエンディングテーマ
『星空サイクリング』などでヒットを飛ばした
1980年代のバンドである。

そして、このバンドのリーダーだったのが
A児ことあがた森魚であった。

あがた森魚は、
1972年に『赤色エレジー』でデビューしたフォークシンガーであるが、
僕はこの歌の辛気臭い世界があまり好きではなかった。
なので、あまり熱心なリスナーではなかった。

ヴァージン
VSの『ロンリー・ローラー』はいいなと思ったが、
他の曲に関してはあまり夢中になれなかった。
なので
200010月、東京グローブ座で行われたエンケンと早川義夫さん、
そしてあがた森魚の
3人のライブに足を運んだ際も、
あがた森魚についてはまったくのノーマークであった。

この当時、僕は本当に人生に疲れきっていた。
これからどうなるのか、何をどうすればいいのかさっぱりわからず、
いつも眠るとき「もうこのまま朝なんかがこないで死んでしまえたらいいのに」と思っていた。

そんな精神状態だったので、
この日のライブも行こうか行くまいか迷ったほどだ。

結論からいえば、行ってよかった。
というより、行ったことで僕は救われた。

あがた森魚の『僕は天使ぢゃないよ』を聴いたのは、
このときがはじめてだった。

「僕は天使ぢゃないよ だから君にすがり
 離れたくないんだと 抱きしめて眠れ
 もうじき朝なんてくるさ」
(作詞・あがた森魚)
というフレーズを聴いていたら、すーっと心が軽くなっていった。

「もうじき朝なんてくるさ」という言葉が、
このすごく心地よく響いたのだ。

なんだか生きていけそうな気がした。

そして、あがた森魚のあとに出てきた
エンケンの『俺は勝つ』や『不滅の男』を聴いて、
いっちょうやってやるかぁ〜
!!という気持ちになった次第である。

その後も、何度も凹んだり投げ出したくなったりしたが、
人生そのものだけは投げ出すことなく今日ももうして書きまくっている。

2000105日、生ギター1本で
「僕は天使ぢゃないよ」と歌うあがた森魚は、
まさに僕にとっては天使であった。
40男が60間近の男に対して天使だと表現するのは気恥ずかしいが、
僕の正直な気持ちである。

もうじき朝なんてくるさ。
コピーライターの僕も脱帽の、実にいい言葉である。


2007.01