今日は所用のため朝から新宿に行ってきた。
久々に新宿に行ってビックリしたのは、
新宿通り沿いにあった丸井のビルがなくなっていたことだ。

新宿は僕が10代〜30代の多くの時間を過ごした
想い出深い街である。
無くなってしまった丸井で僕は、
メンズ・ビギやメンズ・メルローズの洋服を買ったし、
バディ・ホリーばりの黒いセルロイドのメガネを買ったのも
たしかここだったと思う。
いずれも10代の頃だ。

懐かしさに誘われ、
僕は末広亭がある三丁目界隈に足を伸ばした。
以前は毎日のように歩いていた道をキョロキョロしながら歩いていたら、
だいぶ僕が記憶している町並みと変わっていた。
さまざまな新しいお店ができていたのである。

僕は新宿のなかでも、この界隈がいちばん好きだ。
新しいお店ができて、少しだけ表情が様変わりしても、
どことなく60年代のままの雰囲気を醸し出している、
その空気感が好きなのである。

一昨日、映画“竜二”について書いたが、
2002年に公開された高橋克典主演の“竜二Forever”という映画では、
この界隈でのロケシーンがいくつか盛り込まれていて、
「ここは、あのお店の前ではないか!!」
「おっ!このシーンは、あの喫茶店!!」などと
ストーリーとは別のところでもずいぶん楽しませてもらった。

そういや、僕のことをずっとタカハシカツノリという名前だと
勘違いしていた後輩デザイナーがいる。
このデザイナーに以前、
小川町にある歯医者を紹介してあげたことがあるのだが、
後日、「病院の人に誰からの紹介ですか?と聞かれたので、
タカハシカツノリさんですと答えときました」といわれ、
その勘違いに気がついたのだ。

毎日のように顔を合わせておきながら、
名前を間違ったまま覚えているのは、
いやはやなんともな勘違いではあるが、
僕の名前をカツノリと間違える人はほかにもたまにいる。

数年前、とある病院にいった際もそう。
受付の人が「タカハシカツノリ様」と呼び、
まわりが異様にザワついた。
僕はまさか自分のことだとは思わなかったので知らんぷりをしていたら、
病院の人はさらに大きな声で「タカハシカツノリさま〜!」といった。

もしや、と思い立ち上がって受付のところにいったら、
やはり呼ばれていたのは僕だった。

僕はやんわり病院の人に
「カツノリではなくカツトシです」と訂正を入れたのだが、
その間、病院のなかは妙な落胆の空気に満ちていた。
ゴメンね、高橋克典じゃなくて。

さらに僕は高橋克典本人に間違えられたことがある。
いまから10年以上前、
新宿のアルタと紀伊國屋書店の間にあった
富士銀行(現みずほ銀行)の前あたりでのこと。
見知らぬ女性2人組に「タカハシさんですよね」と声をかけられた。
はて、誰だっけ?と訝りつつも「ハイ」と応えると、
その女性2人組は「キャー」という歓声を上げた。

僕はヤバイと思った。
絶対、なにか大きな勘違いをしているに違いないと
瞬時に察知したからだ。

さらにマズイことに、その女性たちの歓声を聞いて
まわりの人たちも遠巻きに僕に注目していた。
これはすぐさま逃げねばと思い、僕は女性2人組にこういった。

僕「あのぉ、すみませんが誰かと勘違いしてません」

女性2人組(の片方)「えっ、タカハシさんですよね」

僕「たしかに僕はタカハシですが…」

女性2人組(のもう片方)「高橋克典さんじゃないんですか」

僕「僕はタカハシカツトシといいます」

読者よ! 友よ!! これはギャグではない。
実際にあった話なのだ。
このとき僕はサングラスをかけていたのだが、
どう考えても僕は高橋克典とは似ても似つかない。
見間違えようがない顔である。
間違えるほうがどうかしているってなもんだ。

高橋克典は、尾崎豊の青学の先輩だったらしい。
本人はミュージシャンを目指していたという。
ミュージシャンを目指し、四苦八苦している頃、
後輩の尾崎豊が華々しくデビューし、
あっという間にスターダムにのし上がった。
そのときの高橋克典の気持ち…焦り、悔しさは
なんとなく想像できる。

しかし、時は流れ尾崎豊は26歳の若さで亡くなり、
高橋克典は俳優として確固たる地位を築いている。

人生というのは実に複雑である。
 

ちなみにこの界隈にはかつて、美川憲一のお店があった。
そう、あの『さそり座の女』の美川憲一である。

コロッケのモノマネによって復活する前は、
普通にお店に出ていたという話を、知り合いから聞いたことがある。

あのお店はまだあるのだろうか?
ちなみに僕は、たまにショーウィンドゥに映る自分を見て、
「オレって美川憲一に似てねぇか!?」と思うときがある(笑)

高橋克典と美川憲一…実に大きい振り幅だ。

僕はいったい、どんな風に他人の目に映っているのだろう?