スタイル・カウンシル「スピーク・ライク・ア・チャイルド」
僕が勤務する会社は、これまでも何度か書いてきたが、
御茶ノ水の神田明神の鳥居をくぐったすぐ先にある。
御茶ノ水は学生の頃から拠点としていた街ということもあり、
この街に対する思い入れは深い。
僕が10代だった1980年代前半の頃から比べて、
いろんな部分が変わってしまったが、
変わらない風景もいっぱいある。
そのひとつが、駅前のディスクユニオンである。
僕は10代の頃から、このお店にはちょくちょく通っていた。
そこでよく中古盤あさりをして、
ロックンロール音楽の歴史を学んだものだ。
もうひとつ、いまはなくなってしまったが
神保町の書泉ブックマートの隣にスキー用品店のヴィクトリアがあって、
そこのビルのたしか7Fに輸入レコード屋さんがあった。
このレコード屋さんはかなり良心的なお店で、
当時としては珍しかったプロモーションビデオの上映会などの
インストアイベントも行っていた。
ここで僕はカタイル・カウンシルのデビュー曲
『スピーク・ライク・ア・チャイルド』のプロモをはじめて観た。
スタイル・カウンシルは、ジャムを解散したポール・ウェラーが
元デキシーズ・ミッドナイト・ランナーズの
ミック・タルボットを相棒に結成したユニットで、
その音楽性はジャムの後期のサウンドより、
さらに黒人音楽へとシフトしていた。
正直いって僕はジャムが大好きだったので、
ビートの効いたストレートなロックンロールを演奏していたジャムに比べ、
スタイル・カウンシルの音楽はちょっとパンチ不足のような気がした。
しかし、大好きなポール・ウェラーが新しい試みをしているのである。
僕がポール・ウェラーについて行けなくてどうするよ?と一生懸命に聴き込んだ。
その甲斐あって、自然とスタイル・カウンシルの音楽も好きになっていった。
『スピーク・ライク・ア・チャイルド』は
“I really like when you speak like a child”というリフレインが印象的な曲である。
「僕はホントに、君が子供のように話すときが大好きなんだ」というのは、
なんかシチュエーション的にも良さそうだ。
ちょっと舌ったらずな、かわいい女の子と仲良くしているシーンを想像してしまう。
うーん、いいな♪
と、妄想の世界はこれぐらいにして・・・
ヴィクトリアのレコード屋さんで見つけた最高のお宝レコードといえば、
ジャムの解散コンサートの海賊版である。
このコンサートを最後にジャムは解散!!という
まさにその日のライブを録音したものである。
この2枚組のレコードを見つけたとき、
僕はまさに全身が震える思いであった。
このレコードがいくらしたのかは憶えていない。
値段なんかいくらでもいいから、
これは絶対に買わなきゃいけないレコードであった。
そそくさとレジで支払いを済ませたあと、
中野のおんぼろアパートに飛ぶように帰って、
買ってきたばかりのレコードに針を下ろした。
ジャムの勢いのある演奏をノイズだらけのレコードで聴きながら、
このレコードを発見できた至福にひたったものだ。
ジャムは素晴らしかった。
スタイル・カウンシルも素晴らしかった。
そして、ポール・ウェラーはいまなお素晴らしい。
そして御茶ノ水は、相変わらずいい街である。
ディスクユニオンも健在だ!!
そういや、ジャムの4枚目のアルバム“セッティング・サンズ”以降のアルバムや
スタイル・カウンシルの5枚目のシングル
『マイ・エヴァー・チェンジング・ムーズ』の12インチ盤を買ったのも、
御茶ノ水のディスクユニオンだったことを想い出した。
御茶ノ水、そしてディスクユニオン。
この2つは僕にとって、なにかルーツともいえる場所なのである。
10代から御茶ノ水で経験したさまざまなこと、
そしてディスクユニオンで買ったレコードの数々は、
僕にとって教科書以上のことを教えてくれたのは間違いない。
ぜひ、これからもずっと素敵な先生でいてほしい。